「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」の思い出
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の思い出について。
ファンからは通称「ポケ戦」と呼ばれている『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ですが、1989年に発売されたOVAとして発売されたガンダムシリーズのアニメ作品です。
OVAという言葉はもはや使われることが無くなりましたが、オリジナル・ビデオ・アニメの略で、意味としてはTVで放映されず映像作品(当時はビデオテープ)として販売された作品群のことです。
当時この『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』も公開当初はTV放映はされず、6本立てのビデオ作品として販売されました。
最近でいえば初放送はTVではなくネット配信・劇場公開された『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に近いですかね。
そもそも1980年代のガンダムといえば、富野由悠季監督による『機動戦士Zガンダム』、『機動戦士ガンダムZZ』、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の方が知名度・人気があるのですが、筆者が好きで個人的に思い入れが強い80年代のガンダムといえばこの『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』です。
「ポケ戦」のことを知ったのは筆者が小6だった1989年でした。
当時ガンダムのプラモデル、特にSDガンダム(頭身の少ないデフォルメモデル)のプラモデルを作ることが筆者の周りの小学生男子の間で流行っていたのですが、クラスメートで仲のよいI君が「ねぇねぇ、ケンプファーって知ってる?ジオンのモビルスーツなんだけどめっちゃかっこいいよ!」と言ってきました。
「ジオン」というと初代ガンダムでも主人公が属する地球連邦軍と敵対するジオン公国のことで、メガのデザインはザクをはじめとして「悪者感」が強いものが多く、当たり前ですが小学生の間ではジオンのロボットより圧倒的にガンダムの方が人気がありました。
当時、ZガンダムやZZガンダムしか観ていなかった筆者は「んー・・・・?ケンプファーなんてモビルスーツいたっけ?」と思いつつ、I君の言葉が気になっていたのでおもちゃ屋さんにいってSDガンダムBB戦士の「ケンプファー」のプラモを観に行きました。
これをおもちゃ屋さんで見て、当時の筆者は「おお!確かにカッコいい!」と思いました。
鈍重な機体が多いジオン系のフォルムでありながらすっきりとしていてカラーリングも頭部のツノも良いですね。
本編ではこんな感じです。
いったいどのガンダム作品で「ケンプファー」が登場するするのか?
「ケンプファー」以外にも「ガンダム NTアレックス」という試作型のガンダムのSDガンダムBB戦士では販売しており、どうも「ケンプファー」と一緒の作品で登場するらしい。
小学校のクラスの友だちに訊いてみたところ、「0080」というシリーズのガンダムで見れるらしいが、それがTV放送されたという話も聞かない。
その後、親とレンタルビデオ店に行ったときにアニメコーナーで『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』を見つけて、「ああ!これだ!」と狂喜し、さっそく最初の2本を親に頼んで借りてもらい、家でみてみました。
最初の2本みて小学生の筆者は驚きました・・・・。
そうなんです。「ポケ戦」というのはこれまでのガンダムシリーズと比べるとかなり異色の作品でして、戦争がテーマにはなっているものの戦争(つまりモビルスーツ戦)の描写は序盤はほとんど無く、全体的にも人間ドラマの様相が強いです。
なにしろ、主人公がパイロットではない一般の小学生。
ガンダムシリーズの作品で主人公がモビルスーツのパイロットではない一般人の作品ってほかにありましたっけ。
小学生男子の好きな「かっこいいメカ同士のバトル」描写がほとんど無く(特に序盤)、どちらかというと戦争によって引き起こされる悲しい物語がテーマなので、当時は小学生男子だった筆者は「ポケ戦」の最初の2本で脱落してしまい続きは観ないでしまっていました。
ガンダムシリーズは好きでしたしなにしろ「ポケ戦」はファンの間でも評判は良い作品なので、「いつかは観よう」と思っていましたがそのまま時が過ぎていました。
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その後、筆者が30歳くらいのときでしょうか。
年末年始あまりにも暇だったので、「ポケ戦」のDVD6本をTSUTAYAで借りてきて一気に観ましたが、最後の方はもうほんとうに胸が詰まって感動しましたよ。
簡単にストーリーを紹介すると、とあるスペースコロニー(宇宙空間に人類が作った居住区)で暮らす小学生のアルがひょんなことからコロニーを攻撃してきて失敗して不時着したザク(ジオンのロボット)のパイロットであるバーニィと出会います。
このバーニィが本当に素敵なナイスガイで、アルの兄貴分的な存在にもなり、憧れの存在になります。
その一方、アルの幼馴染でお隣に住んでいる年上のおねえさんであるクリスとアルが再会してバーニィ同様クリスと親交を温めるのですが、クリスは連邦軍のテストパイロットで「ガンダム NTアレックス」の搭乗者でもありました。
敵対する勢力のパイロット同士であることを知らないバーニィとクリスが出会うシーンもあります。
ここから先はネタバレになるので伏せますが、アルにとってバーニィもクリスも本当に大事な2人。
この2人がどうなっていくのかが後半の見どころです。
当時のアニメージュの表紙では『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』が筆者の知る限り2回表紙を飾りました。
いまと違い当時は「ガンダム」というと小学男子が特に好む作品だったかと思いますが、「ポケ戦」はキャラデザを美樹本晴彦さんが担当し、物語も戦記ではなく人間ドラマ中心だったので女性にも受け入れやすい作風だったのでアニメージュ誌でも注目していたのかもしれません。
やっぱり美樹本さんのキャラデザは洗練されていて素敵。今でも十分通用するどころか
このキャラデザでまたガンダム作品を観たいくらい。
アルにとっての「お隣の素敵なおねえさん」という雰囲気がよく出ているクリスさんの1枚絵。
アルとクリスさんの温かい関係がよく表現されていると思います。
誰を憎んで戦っているわけではなく、自分の使命として・みんなを守るためにモビルスーツに乗って敵と戦っている。けれどそれが誰かにとって悲しい結果になってしまう。
戦争の哀しさをパイロットではない一般人の男の子の視点から描いた名作だと思います。
書いているうちにまた「ポケ戦」が観たくなりました。
今年のクリスマス近くにまた観てみようと思います。